基本的な使用方法

構成

このエクステンションを使うためには、以下のように構成しなければなりません。

return [
    'bootstrap' => [
        'queue', // queue コンポーネントが自身のコンソール・コマンドを登録します
    ],
    'components' => [
        'queue' => [
            'class' => \yii\queue\<driver>\Queue::class,
            'as log' => \yii\queue\LogBehavior::class,
            // 他のドライバ・オプション
        ],
    ],
];

利用可能なドライバとそのドキュメントは 目次 に記載されています。

使用方法

キューに送られるタスクはそれぞれ独立したクラスとして定義されなければなりません。 例えば、ファイルをダウンロードして保存すう必要がある場合、そのクラスは以下のようなものになります。

class DownloadJob extends BaseObject implements \yii\queue\JobInterface
{
    public $url;
    public $file;
    
    public function execute($queue)
    {
        file_put_contents($this->file, file_get_contents($this->url));
    }
}

以下のようにして、キューにタスクを送ります。

Yii::$app->queue->push(new DownloadJob([
    'url' => 'http://example.com/image.jpg',
    'file' => '/tmp/image.jpg',
]));

5 分後に走るべきジョブをキューにプッシュするには、

Yii::$app->queue->delay(5 * 60)->push(new DownloadJob([
    'url' => 'http://example.com/image.jpg',
    'file' => '/tmp/image.jpg',
]));

重要: 全てのドライバが遅延実行をサポートしている訳ではありません。

ジョブをプッシュするときに優先度を指定することも出来ます。

Yii::$app->queue->priority(10)->push(new ErrorNotification([
    'recipient' => 'notifyme@example.com',
]));

優先度の数値の低いジョブほど先に実行されます。優先度の既定値は 1024 です。

重要: 全てのドライバがジョブの優先度をサポートしている訳ではありません。

キューの処理

タスクがどのように実行されるかは、正確には、使用されるドライバに依存します。 ほとんどのドライバでは、コンポーネントがアプリケーションに登録したコンソール・コマンドを使って実行されます。 詳細は、対応するドライバのドキュメントを参照して下さい。

ジョブの状態

queue コンポーネントは、キューにプッシュされたジョブの状態を追跡することが出来ます。

// ジョブをキューにプッシュして、メッセージ ID を取得する
$id = Yii::$app->queue->push(new SomeJob());

// ジョブが実行待ちであるかチェックする
Yii::$app->queue->isWaiting($id);

// ワーカがキューからジョブを受け取って実行しているかチェックする
Yii::$app->queue->isReserved($id);

// ワーカがジョブを完了したかチェックする
Yii::$app->queue->isDone($id);

重要: RabbitMQ ドライバはジョブの状態追跡をサポートしていません。

サード・パーティのワーカにメッセージを送る

キューにはどのようなデータでも渡すことが出来ます。

Yii::$app->queue->push([
    'function' => 'download',
    'url' => 'http://example.com/image.jpg',
    'file' => '/tmp/image.jpg',
]);

このことは、キューが特別なサード・パーティのワーカを使って処理される場合に有用となります。

ワーカが PHP で実装されているのではない場合、データをシリアライズする方法を変更しなければなりません。 例えば、JSON にシリアライズする場合は、

return [
    'components' => [
        'queue' => [
            'class' => \yii\queue\<driver>\Queue::class,
            'strictJobType' => false,
            'serializer' => \yii\queue\serializers\JsonSerializer::class,
        ],
    ],
];

イベントを処理する

キューは以下のイベントをトリガします。

イベント名 イベント・クラス トリガされるタイミング
Queue::EVENT_BEFORE_PUSH PushEvent Queue::push() メソッドを使ってジョブをキューに追加する前
Queue::EVENT_AFTER_PUSH PushEvent Queue::push() メソッドを使ってジョブをキューに追加した後
Queue::EVENT_BEFORE_EXEC ExecEvent ジョブを実行する前
Queue::EVENT_AFTER_EXEC ExecEvent ジョブが完了した後
Queue::EVENT_AFTER_ERROR ExecEvent ジョブ実行中にキャッチされない例外が発生したとき
cli\Queue:EVENT_WORKER_START WorkerEvent ワーカが開始されたとき
cli\Queue:EVENT_WORKER_LOOP WorkerEvent キューに対するリクエストを繰り返すたびに
cli\Queue:EVENT_WORKER_STOP WorkerEvent ワーカが停止されたとき

これらのイベントの全てに対してあなた独自のハンドラをアタッチすることが簡単にできます。 例えば、ジョブが特殊な例外で失敗した場合に、時間をおいて再実行させてみましょう。

Yii::$app->queue->on(Queue::EVENT_AFTER_ERROR, function ($event) {
    if ($event->error instanceof TemporaryUnprocessableJobException) {
        $queue = $event->sender;
        $queue->delay(7200)->push($event->job);
    }
});

イベントのロギング

queue コンポーネントは Yii の内蔵ロガー を使ってキューのイベントを記録する LogBehavior を提供しています。

これを有効にするためには、queue コンポーネントを以下のように構成するだけです。

return [
    'components' => [
        'queue' => [
            'class' => \yii\queue\redis\Queue::class,
            'as log' => \yii\queue\LogBehavior::class
        ],
    ],
];

複数のキュー

構成例:

return [
    'bootstrap' => [
        'queue1', // 第一のコンポーネントがそれ自身のコンソール・コマンドを登録
        'queue2', // 第二のコンポーネントがそれ自身のコンソール・コマンドを登録
    ],
    'components' => [
        'queue1' => [
            'class' => \yii\queue\redis\Queue::class,
        ],
        'queue2' => [
            'class' => \yii\queue\db\Queue::class,
            'strictJobType' => false,
            'serializer' => \yii\queue\serializers\JsonSerializer::class,
        ],
    ],
];

使用例:

// 標準のワーカで処理されるジョブをキューに送る
Yii::$app->queue1->push(new DownloadJob([
    'url' => 'http://example.com/image.jpg',
    'file' => '/tmp/image.jpg',
]));

// サード・パーティのワーカで処理されるタスクを別のキューに送る
Yii::$app->queue2->push([
    'function' => 'download',
    'url' => 'http://example.com/image.jpg',
    'file' => '/tmp/image.jpg',
]);

制限事項

キューを使用する場合、キューに置かれたタスクは独立したプロセスによって取得される、ということを覚えておくことが重要です。 タスクを実行するときに外部的な依存は避けなければなりません。 なぜなら、ワーカがジョブを実行する環境においてその依存を利用できるとは限らないからです。

タスクを処理するために必要なデータは、ジョブ・オブジェクトのプロパティに設定して、ジョブと一緒にキューに送らなければなりません。

ActiveRecord を扱う必要がある場合は、オブジェクトそのものではなく、ID を送ります。 そして、処理するときに DB から読み出します。

例えば、

Yii::$app->queue->push(new SomeJob([
    'userId' => Yii::$app->user->id,
    'bookId' => $book->id,
    'someUrl' => Url::to(['controller/action']),
]));

タスク・クラス:

class SomeJob extends BaseObject implements \yii\queue\JobInterface
{
    public $userId;
    public $bookId;
    public $someUrl;

    public function execute($queue)
    {
        $user = User::findOne($this->userId);
        $book = Book::findOne($this->bookId);
        //...
    }
}